画面内指紋認証(Fingerprints on Display)について調べてみる。

画面内指紋認証(Fingerprints on Display)について調べてみる。

こんにちは。ぽらりす(@Polaris__x64)です。

さて、今回の記事では、最近何かと話題な『画面内指紋認証(Fingerprints on Display)』について書いていきたいと思います。

 

と…..言いたいところではありますが、似たような記事が存在していて、その記事の著者様が私とTwitterでFFの方でしたので、先にご紹介させていただきます。

指紋隆線、下から見るか上から見るか?

下記の私の記事より数千倍分かりやすく記載されているので、ぜひ読んでみてください。この記事にまとめられていて私が調べた物が無駄になりました。

(いい意味でとらえてください)

 

完全に丸被りしたので、一時はこの下書きのWordファイルをゴミ箱に投げたのですが、折角書いた文章ではありますので拾い上げて記事としてアップすることにしました。


さて、ここから下が本題です。

 

前々回の記事で『【レビュー】Xiaomi Mi 9を買ったお話。』という記事を公開しました。あの記事で少し触れたのですが、最近何かと話題な『画面内指紋認証(Fingerprints on Display)』について書いていきたいと思います。

 

Xiaomi Mi 9の大々的に掲げている機能として、「画面内指紋認証(Fingerprints on Display 以下FoD)」があります。これは、以前のような指紋センサーを新たに設置することなくディスプレイ下に埋め込むことによって、画面のセンサーがある部分に触れると指紋認証されるというものであり、非常に近未来感がある技術です。

この近未来感があるFoDですが、最近やたらと中華OLEDスマートフォンでの採用が目立ちます。それも低価格帯でも目立ちますね。一方でSamsungなどの老舗最大手はGalaxy S10でやっとこさFoDを搭載させた点や、AppleはFoDを採用せずに2017年に赤外線を駆使したTrueDepthカメラによる3D顔認証システム「Face ID」を主体とさせました。

その他の老舗他社の旗艦機でも従来の指紋認証センサーを用いてFoDを使わないなどの少し面白い点があります。

そんなことが気になって少し調べてみることにしました。そんな私が調べた内容をまとめたものを書いていきたいと思います。

 

Fingerprints on Displayの概要

FoDも5種類ある

概要と言っても、そのままの意味で画面内に指紋認証センサーを搭載させたものになります。画面内に埋め込まれた指紋認証センサー部分に指で触れることによって認証を行えるといったものになります。

2019年前半ではOLEDの下にセンサーを搭載したものが一般的ですが、LCDに搭載させる技術も開発されています。

Fingerprints on Displayも細かく分けると、①Under OLED Display 型 ②In-OLED Display型 ③in-LCD Display型 ④On-LCD Display型 ⑤フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)ベース型の5つに分けられます。

どれも名前の通りなのですが、①はOLEDの下に指紋センサーを設置するもの、②は現在開発中、③も開発中で2019年後半には出るのではないかと言われているもの、④は開発段階にも至ってないもの(Appleが特許取得してたりする)、⑤は「化学実験で使うものが出てきて鬱になる」と言いたくなるもの。細かいことは言いませんが赤外線を用いてスペクトルを計測する技術です。

現在では①が主流でGoodixやSynaptics, Qualcommが製品化しています。③はAUO, BOEが絶賛開発中で2019年後半には登場すると言われています。仮にLCDに組み込むことができれば低価格帯のスマートフォンでも画面内指紋認証が可能になるという事になりますね。

 

認証方式の違い

前項で指紋センサーの位置やOLED,LCDの違いで5種類に分けられると記載しましたが、さらに認証に使う方式によっても分けられます。

方式が2つあり、光学式と超音波式の二つに分かれます。従来の指紋認証ではこれらに加えて、静電気式があります。

 

このFoDの光学式と超音波式の違いですが、

 

・光学式

画面下から光を指に当ててその指の凹凸反射をCMOS,CCDセンサーで読み取る。GoodixやSynapticsが主要メーカー。

出典:BEFS Thechnology -INTRODUCTION TO BIOMETRICS TECHNOLOGY-

 

・超音波式

画面下から超音波を出し指に当ててその指の凹凸反射をセンサーで読み取る。今のところQualcommのみ。多分。

出典:BEFS Thechnology -INTRODUCTION TO BIOMETRICS TECHNOLOGY-

 

 

と、言った感じで、簡単に言えば『指の指紋部分の凹凸を確認するために光を使うか超音波を使うか』の違いです。

 

超音波式と光学式の比較

・表での比較

更に細かい光学式、超音波式の比較を行っていきましょう。この表をご覧ください。

方式 静電気式(参考) 光学式 超音波式
認識に必要な面積
指の状態による左右 汗や汚れに強い 汗や汚れに弱い 汗や汚れに強い
画質 良い 悪い(歪み修正が必要) 非常に良い
セキュリティ 非常に良い 良い 非常に良い
偽造耐性 良い 悪い 非常に良い
認識能力 良い 悪い 良い
消費電力 低い 高い やや高い
費用 安価 安価 やや高価

出典:腾讯网 -聊聊光学屏下指纹与超声波指纹识别-  一部改変及び項目追加

この表をざっと見ると、それぞれで得意不得意が極端であるということが読み取れますね。最初に、近年中華端末で採用が進んでいる『光学式』に対して焦点を当てていきます。

 

・認証精度・速度の比較

まず、光学式で目立つのが、『悪い』という項目が多い点です。光学式では先ほど少し記載しましたが、光の反射をCMOSセンサーで捉え、画像認識しています。このCMOSセンサーですが、一般的にカメラに使われる光を電気信号に変える撮像素子のことです。

一昔前はCCDセンサーが一般的でしたね。私が初めて買ってもらったカメラもCCDセンサーのカメラでした。

 

つまり、簡単に言えば光の反射をカメラで画像化させて指紋を認識していることになります。そう考えると認証の精度が落ちるというのが納得がいくと思います。超音波式は音波を超音波センサーで受け取り、画像化させるので光学式よりも解像度良い画像が生成できます。そのため、光学式と比較すると認証精度が高いのです。

 

また、光学式にはその名の通り光が必要です。指に当てた光を反射させるくらいの強力な光が必要ですので、FoD使用時にはセンサーが埋め込まれている付近のOLEDが最大輝度で発光します。一般的な室内や屋外では環境光下では、この光量でも足りるのですが、真っ暗闇の部屋ではOLEDの部分的最大発光の光量では指紋を認識する最低限の反射が得られない事が屡々あります。一方で超音波式では光を必要としないので暗闇でも認識能力や精度が落ちる事なく認証できます。

 

・セキュリティ面での比較

次にセキュリティ面の話になりますが、超音波式は指の表面だけではなくて指の内部まで貫通するので、血流が読み取れます。ということは、偽造作成した指紋を3Dプリントしたものなどがすべて無効になります。(あくまでも理論的な話です。)

しかし、光学式では指の凹凸しか読み取ることができないので、その凹凸さえ再現できてしまえば偽造が可能になります。現在の技術では精密な3Dプリンターなどを用いると簡単に偽造することが技術的には可能です。決してセキュリティ性能としては低いとは言えませんが、組織、政府などの力を使えば簡単に開けることができてしまうという大きなデメリットがあります。

(まあ、普通に生活している分ではそんなに強固なセキュリティは必要ではないと思うんですけどね。うん。)

 

・費用面での比較

最後に費用面です。静電気式、光学式は安価ですが、超音波式はセンサー自体がやや高価です。

超音波技術は軍事機器や医療機器でも使われるほどの精密なものであり、センサーが高価になります。

しかし、センサー自体が高価なだけならまだなんとかなりそうな気もしますが、実はそれ以外にも問題があります。

 

・認証精度が高い超音波式の大きなデメリット

先ほどセンサーが超音波式の方が高価と記載しましたが、超音波自体の性質自体に『空気層』の問題があります。

探触子と被検査体の間に空気層があると、ほとんどの超音波は表面で反射して、内部に入射する事ができなくなります。

出展:ダイヤ電子応用株式会社 超音波探傷の原理

こちらの引用文を見ていただければわかると思いますが、空気層があると超音波はダメなのです。

CNETでもRigid OLEDでは超音波式画面内指紋認証は利用できないとの話が書かれていますね。

Qualcomm introduced this fingerprint technology last June, but few smartphones have publicly embraced it.

That’s because the ultrasonic waves will work only through flexible OLED displays, according to Gordon. Phones more commonly used what’s known as rigid OLED, which has air gaps that prevent pressure waves from going through.

出展:CNET Galaxy S10 goes ultrasonic? Here’s an early look at its likely fingerprint reader

 

さて、なんで空気層があるとダメなの?と思う方もいらっしゃると思いますので、少し解説してみます。

OLEDには曲げることのできるFlexible OLEDと曲げることのできないRigid OLEDが存在します。OLEDと聞くと「全て柔軟に曲げられるイメージ」が一般的にはあると思われますが、実はそうではないのです。

Rigid OLEDにはN2などが含まれる空気層が存在するのですが、Flexible OLEDには空気層が存在しません。そのため、後者の空気層が存在しないFlexible OLEDは超音波が通過でき、前者のRigid OLEDは通過できないというわけです。基本的に価格面は御察しの通り、Rigid OLED < Flexible OLEDとなっています。

そのため、超音波式の画面内指紋センサーとFlexible OLEDの両方を採用すると非常にコストが上がってしまいます。

Flexible OLEDの採用機種としては、Samsung Galaxy S/NoteシリーズやHuawei Mate 20/P30シリーズ、OnePlus 7 Pro、Google Pixel 3 XL、Apple iPhone X/XSシリーズなどの『高価格帯』機種ではFlexible OLEDを採用しています。

 

ここで疑問に思った人はいないでしょうか。「なぜHuawei Mate 20・P30/P30 ProやOnePlus 7 ProはFlexible OLEDなのに光学式を採用しているの?」という疑問です。

Huaweiに関しては何となく察しがつくと思いますが、後者のOnePlusに関してはコスト的な問題でしょう。あくまでも個人的な推測ですが。

 

さて、超音波式の大きなデメリットを書きましたが、この影響が理由の一つとして挙げられるSamsungのRigid OLEDに中国から注文が急増しているとのニュースもあります。

ET News -Operation Rate of Samsung Display’s Rigid OLED Production Line Recovers-

単にOLEDを搭載したいのであれば、中華OLEDメーカー(BOEやtianma等)製を使えば良い話ですが、品質や量産能力などを求めると少し高いけどSamsung製になってしまうのかもしれませんね。

 

・センサーが見えてしまう課題

超音波式・光学式問わない問題なのですが、これは一部では騒がれたのでご存じの方もいらっしゃるのではないでしょうか?

そう。太陽光下で画面内に設置された指紋センサーが透けてしまうという問題です。

屋外に出ないもやしオタクには特に関係ない話ですが、太陽光下で白い画面になるとOLED特有の『画面の焼き付き』みたいな感じでセンサーが透けて見えます。

 

こちらはXiaomi Mi 9の画面下をLEDライトで照らした画像です。赤い四角で囲まれている部分に円が見えると思いますが、これが指紋センサーです。

 

この問題はSamsung Galaxy S10/S10+でも改善されることはありませんでした。画面下に配置している以上、改善が非常に難しいので「仕様」として扱う気だと思うのですが、何とかしてほしい問題ではありますね。

 

中華勢が挙って画面内指紋認証を搭載する理由

ここまで読んでいればもう分かると思いますが、少しセキュリティが弱い事や認証精度が悪いとしても安価に『画面内指紋認証』という肩書きを手に入れられるので、こぞってRigid OLEDで光学式の画面内指紋認証を搭載した機種が増えると考えることができます。

中華勢も如何にトレンドを生み出せるか・トレンドに乗れるかという競争が起こっているので、画面占有率の数値や画面内指紋認証の有無、48MPなIMX586などのカタログスペックに右往左往している現状がよくわかります。なんでも二郎みたいにマシマシにすれば良いって問題じゃないんだぞ

この傾向と言えば少し違いますが、日本でAndroidスマホが普及し始めた頃の「世界初搭載」「機能全部乗せ」「10MP以上の画素数勝負」をしていた日本メーカーと類似していますね。今では苦戦していますが。

それに対して、SamsungやApple、LGなどAndroid搭載スマートフォン創成期からシェアを安定して取ってきた老舗最大手達は近年『安定性・セキュリティー重視』という傾向がありますので、偽造が可能な光学式の採用を見送り、超音波式を採用したり、セキュリティーの高い静電気式を採用し続けています。

老舗大手の動向としては、Samsung Galaxy S10でQualcommの『In-Display 3D Sonic Sensors』を採用し、世界初の超音波式FoDを搭載したスマートフォンになりました。今年8月に発表されたNote 10もこれを採用しています。また、AppleもFace IDという指紋認証とは別な方面からのアプローチをしていますが、特許の取得状況から画面のどこを触れても指紋認証できる超音波式FoDとなる『第3世代 Touch ID (仮称)』なるものを開発していると考えられます。

決して、このような老舗大手たちも力が弱まったという事ではなく、今まで造り上げてきたブランド名を汚さないような完璧性を求めているので中華勢とは考え方が違うんですよね。

 

最後に

こんな感じでざっとFoDについての紹介を行ってきましたが、正直言って一概にどちらが良いとは言い難い状況になっています。光学式を採用するか、超音波式を採用するかでメーカーの考え方が少しわかる気がします。

この画面際指紋認証技術は世間的には画期的と捉えられ、日本でも『中華勢凄い!何で老舗最大手達や国内メーカーは採用しないんだ!』と言われがちですが、蓋を開けてみると実は老舗勢が導入しない一種の理由も見えてきました。世間的に完璧なイメージがあり、一切の妥協と設計ミスによる失敗が許されない老舗勢と新参が多く端末のリリースサイクルが非常に短い中華勢で大きな考え方の違いがあるので致し方がない事でもありますね。

そんな感じで、このFoDに関して調べてみると課題や近年のスマートフォン開発に考え方の二極化の現状について様々な事がわかりました。

先ほども述べましたが、どちらが一概に良いとは言い難いですが、中華勢が先駆者で老舗勢が完璧な物を作り出す今のスタイルも嫌いではないので、どちらも頑張ってほしいなと思うばかりです。

それでは今回はこの辺で。

 

参考文献

BEFS -INTRODUCTION TO BIOMETRICS TECHNOLOGY-

腾讯网 -聊聊光学屏下指纹与超声波指纹识别- 

IHS Markit – [Display Dynamics] Display-based fingerprint sensor structures-

Android Authority -How fingerprint scanners work: optical, capacitive, and ultrasonic variants explained-

Android Authority -Ultrasonic fingerprint scanners: how do they work?-

Goodix -Meet The Company Behind The In-Display Fingerprint Sensors In OnePlus, Huawei, Vivo And Redmi Phones-

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